昔話をしよう。
今度のも当然のことながら、俺のとある過去の話だ。これは思い出すまでもなく疑うまでもなく、確かにあったこと。この前みたいに「これいつの記憶だぁ?」なんて頭をひねらずとも、ついでに某友人の電話を待たずとも語れる、正真正銘俺の思い出話である。あ、聞きたくないなら別にいい。無理しないで即刻このページをとばしてくれ。
……さて、興味のない人はいなくなったかな? いや、何せ実話である。更には登場人物に俺という名の一男子がいる実話である。多くの人の耳にはなるだけ入れたくないし、聞きたくない興味ないという人達には尚更、その記憶領域に刻んで欲しくない。恥ずかしい過去話は、興味を持ってくれていて且つ自分をわかってくれる、そういう人だけに話すべきなのさ。べらべらと酒の席なんかで話すようなもんじゃない。
ということで、早速その話を始めようか。いや、その話の序章を。
それは俺が中学二年生、まだ公立共学中学への転校前で、中高一貫の私立男子校に通っていた頃のことだ。そう、二年生も半分を終えようとしていた八月、夏休みの終わりの話になる。この頃そのチンケな私立男子校は、二ヵ月後に迫った学園祭――あるいは文化祭の方が通りがいいだろうか――の準備に追われていた。何故この学校において学園祭が一年で最も盛り上がる行事なのか、その理由はわかってしまえば呆れるより他ないもので、先輩達に言わせると近くにある女子校の生徒が数多く来るかららしい。その女子校の生徒というのがまた可愛い子が多いらしく、この学園祭なる行事で目立つことをすれば、その可愛い彼女達の内の一人と恋人同士になれるということなんだそうだ。阿呆かと言いたくなる。どうしてそんな不純な理由で学園祭を盛り上げるかな。
と、こんなことを言っていることからわかってもらえるように、そんな異常な盛り上がりを見せる学園祭を既に一度経験していたこの時の俺は、学園祭なる行事にあまり関心がなかった。舞台に立ったり参加団体を作ったりなど積極的に参加するなんてもっての外だったし、希望者が殺到する実行委員になる気も更々なかった。学園祭は盛り上がっているところを遠巻きに見て「おー盛り上がってる盛り上がってる」と高みの見物を決め込むのが賢いやり方さ。
そんなこんなでその八月の終わりの頃も、せかせかと忙しそうに準備している有志参加の生徒を、所属していたバレーボール部の主たる活動場所・体育館から眺めるだけで、そして「そういえばそろそろ学園祭かぁ」なんてぼけらったと思うだけで、大して身も心も一大行事に打ち込んではいなかった。
けれど、俺はともかくとして、やはり学園祭ともなれば一人くらいは、ハイテンションをぶちかます友人がいるもんだ。
この話も、俺の大嫌いなそんなハイテンション馬鹿が口にした一言が、きっかけの話。
さて、これでやっと話の序章は終わる。
その序章のおまけ事項として――次のことを覚えておいて欲しい。
俺は中学校を、私立男子校と公立共学校の二つに、それぞれ一年半ずつ通っていた。中学受験をして中高一貫私立男子校に入学、二年生の十月の終わりまでを通い、高校受験を理由に中退、公立共学校に転校したのが同じく十一月のこと。
つまり。
この話は、この学園祭の話は、俺が私立男子校を去る直前の話になる――
さぁ、では昔話をしよう。
きっかけは、
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