昔話をしよう。
という語り出しで俺が今まで綴ってきた過去の物語の多くで、語り部たる俺を差し置き主人公的立場にある友人・野瀬睦について、俺が一言で表現するなら多分こんな言葉になる。
世界一ダイナマイトに近い男・野瀬睦、ここに存在す。
人間型ダイナマイトと言ってしまえばそんなもんある訳ねぇだろという具合に大げさになってしまうが、けれどこいつと付き合ってきた俺やその他奴の友人諸君からすれば野瀬睦、通称・ムツはまさにそんな印象だった。導火線が短いのかよっぽど扱いに注意せねばならない物体なのか、奴は日々頼みもしないのに学校生活の中で戦隊モノショーの如き爆発を繰り広げた。爆発も爆発、大爆発を通り越してもはや暴発である。俺達がいらぬ衝撃を与えまいといくら努力しても気がついた時にはどかんと一発いっていて、それが何の被害も出さないただの自爆ならまだいいものを、俺を代表とする周囲の人間を容赦なく巻き込むもんだから本当にタチが悪かった。何にせよ、ムツが暴れて俺がろくな思いをしたことはない。
しかし、だ。
そんな迷惑極まりない人格をしたムツが派手に爆発してやらかしたことの中にも、よくよく思い返してみればちょっとは世のため人のためになったんじゃないかと思えなくもないものだって、実は確かに存在する。俺がそう思っているなんて、近々高校三年生になる当時・中学一年生の時より増長した本人には、とても面と向かって言えたことではないけれど。
言った暁には、きっと調子に乗って世界を震撼の渦中に陥れる大爆発を起こすだろうからな。その大爆発が、あの時のような結果に向かうのなら、別に何の問題も発生しないんだけど、そうもいかないのが世の中ってヤツだ。
けれどまぁ――
俺にちょっとした感動を与えてくれた、あの時の魂こもった爆発については、今回敬意を示しつつ。
ダイナマイトが具現化したような男・野瀬睦が主役の話を、することとしよう。
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