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そんな感じでミキが原稿を提出する前日、つまり俺とメグがパソコンを目の前にちょっとしたぶっちゃけトークをした翌日は、ムツが自分の原稿をそっちのけで更なる助っ人を呼び込んできた。
どうやら俺達Cチームの四人と正規文芸部員の神川の原稿だけでは厚みが足りないと考え出したらしい。幸か不幸かムツの脳内コンピュータはこういったことを遠慮なく頼めそうな人員二人にすぐさま思い至ったらしく、その日図書館書庫で俺が一人パソコンを前にまたもうんうん唸っているところへ、その二人を引っさげて竜巻の如き勢いで舞い戻ってきた。
「喜べ諸君! 新たなる協力者を捕獲したぞ!」
という、お前は海に仕掛けた罠で新種の深海魚でも捕まえてきたのか的な台詞を言い放ったかと思うと、ムツはその「新たなる協力者」を俺に向かって差し出す。面食らっている不憫な二人組の襟首を左右の手に掴んで、浮かべている表情はどこまでも得意げだ。意味がわからない。
「ゆ、ユキ……一体何のことなんだ? ムツには『とりあえず何でもいいから面白いものを書いてくれ! ペンと紙を持て、話はそれからだッ!』って言われたんだけどさ、」
「……」
そんでもって、いきなりのことに理解がついていかないらしくわたわたとしている小柄な少年と、その隣で既に何もかも諦め悟りの境地に入ったかのような無表情で沈黙を紡いでいる長身の男のコンビは、……もうここまで言えば大体の人はわかってくれるよな。そう、バレー部Bチーム所属の名物幼馴染コンビ、アキこと瀬田彰と、カナこと佐渡要一だった。
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